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吼える月
第18章 荒波
「やめろって、やめろ!! お姉さん、大丈夫!?」
「ええ、なんとか大丈夫!! イルヒ、イルヒは!?」
「やめろよ、皆、やめろよ!!」
イルヒは甲板に押し倒されて短い髪を鷲掴みにされていた。
短刀がイルヒの喉にあてられる。
「だめぇぇぇぇぇっ!!」
ユウナは全力駆け、イルヒに馬なりになっている少年に突進した。テオンがその隙にイルヒを掻っ攫う。
「姫様――っ!?」
ユウナの声に気づいたサクが声を張り上げた。
グォォォォォォ。
呼応したように怪物は咆哮し、その爪がサクに襲いかかる。
サクは身を捻るようにしてそれを躱し、ユウナの元に駆け付けようとする。それを制したのはユウナだった。
「来ないで、サク!! あたしはちゃんとやれる。大丈夫だから、だからサクはサクの闘いを!!」
「そんな強がりは――」
グォォォォォォ。
「ちっ、しつこいな、こいつは!! 切りまくってもなんで再生しやがるんだよ!! トカゲか、こいつは!! おい、シバ――っ!?」
「早く、行ってやれ。ここは俺が。子供達を!!」
グォォォォォォ。
「ああ、しつけぇっ!! なんで俺にここまで絡む!!」
帆柱がばたばたと倒れて、船が揺れる。
サクが動くことを、怪物はよしとしないようだった。
「猿お兄さん――っ、僕がいる。僕がいるから!! 絶対お姉さん守ってみせるから、だからシバを助けて!! その怪物に皆が操られているみたいだから、早くそいつをやっつけて!! 僕は……仲間を殺したくないんだっ!!」
「猿、あたいからも頼むっ!! あたいもへっちゃらさっ!! あたいは、もっと酷い中で生きてきた。これくらいへっちゃらさ!! ちゃんとお嬢守るから、だからこっちのことは気にしないで!!」