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吼える月
第18章 荒波
サクは、既に正気にあることをひとりひとり観察して確認してから、威嚇するように凄んだ顔と、低い声を出した。
「……お前達、あの海の中に放り込まれたいか」
全員、蒼白な顔でぶんぶんと頭を横に振る。
「あの怪物、やっつけられたのを見たか?」
全員、今度はぶんぶんと縦に頭を振る。
「あれは誰がやっつけたと思う?」
一同の顔がサクに向いたが、サクは神妙な顔で頭を振った。
「俺じゃねぇよ。あれこそが……この国を護る神獣青龍様だ。あの悪い怪物やお前達に殺されようとしていた俺達だけではなく、殺そうとしていたお前達までも救いに現われたんだ」
子供達の目に、ぱっと光が差す。
「僕達を救ってくれたのが、青龍!?」
「あの怪物は青龍ではなく、悪いものだったの!?」
「おう、そうだ。いいか。神獣というのは、お前達を攻撃するのではなく、護るために存在するんだ。テオンが体を張り、イルヒが命がけで、そして姫様まで自分で海に飛び込んで、自分達を殺そうとしたお前達をも助けようとしたから、青龍は心を打たれて皆を助けに現われたんだ。
青龍様を呼んだのは、この三人のおかげだぞ?」
子供達はびくびくしながら、そしてバツが悪そうな顔で、テオンとイルヒ、そしてユウナを見た。
「……だがな、神獣は恐い。悪いこと間違ったことをしたままでいると、怒り狂ってまた出てくるらしい。青龍の逆鱗に触れればお前達、青龍に生きながら食われるぞ? 想像してみろ、すげぇ痛いどころの話じゃねぇぞ? 刃物での切傷に、沢山の粗塩をぐりぐりなすりつけられる以上の、じたばたする痛さだぞ」
諭すようにしてしっかり脅すサク。無論、出任せだ。
「えぇぇぇぇぇっ」
「傷に塩以上!? やだよ、やだ――っ!!」
「僕太っているけど、食べてもおいしくないよ~。食べられたくないよ!!」
「じゃあどうすればいいか、考えろ」
サクは両腕を組みながら、顰めっ面をした。
「少しでも悪いことをしたと思うのなら。どうすればいいのか、お前達の頭で考えろ。お前達の身形は子供でも、蒼陵の民として海に立つことを許されているのなら、もう一人前の責任ある大人だ。子供だという言い逃れをせず、男としてなにをすべきなのか、考えてみろ」