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吼える月
第18章 荒波
子供達が顔を見合わせて、そして数秒――。
「"仲間"なのに、助けて貰っていたのに、自分可愛さに殺そうとして本当にごめんなさい。もうこんなことしません。本当に悪かったです。そして、こんな僕達を助けてくれてありがとう!! この恩は忘れない。今度は絶対、僕達が護るから。嘘じゃないよ、信じて!!」
辿々しい謝罪は涙と嗚咽混じりで。
それが脅されたゆえの理由ではなく、胸に渦巻いていた真情を吐露したゆえの真剣さを伴い、殺伐とした空気はここで終焉したように思えた。
「――と、言っているが。どうだ、テオン、イルヒ、姫様」
「どうって言われても、僕達仲間だし。仲間は助けて当然だし、信じて当然だし」
「またあたい達と仲良く、一緒に頑張っていってくれるのなら、あたいはなにもいうことないよ。大体助けてくれたのは……」
イルヒがユウナとサクを見遣る。
そんなイルヒの口元を手で覆ったユウナは、にっこりと微笑んだ。
「助けてくれたのは、青龍。だから青龍に感謝を捧げましょう。青龍はひとを殺すことをよしとせず、皆を見殺しにはしない正義の神獣。どんな辛い日々にも、必ず神獣の加護があるのだと皆にわかって貰えるのなら、あたしは……それでいいわ。ね、サク?」
「……ということだ。だが俺は、この三人みたいに優しくはねぇ。俺に護ると約束したことをお前達は破った。当然、その報いは受けるよな?」
「ひぃぃぃぃっ!?」
サクは、ぼきぼきと指の骨を鳴らした。
「ここからは男同士の対話だ。覚悟しろっ!! 自分が悪かったと思う奴は、さぁ目をつむれ。歯を食いしばれよ!?」
「猿!?」
「猿お兄さん!?」
「サク、ちょ……っ」
そして――。