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吼える月
第19章 遮断
『ふむ、確かに。もしもその渦が青龍の力と無縁のものであれば、なぜ神獣を祀る神殿を取り巻いているのか。神殿自体、なぜ海に移動したのか。神殿の障壁となる渦の力は武神将や祠官と関係があるのかないのか。どうも神獣以外の力の介在がある気がするな』
「な? そう思うだろ? 極めつけがあの怪物だ。あれは間違いなく、"人為的"だろう?」
『ほほう、小僧は海に住まう怪物とは思わなんだか』
「怪物ならば、生きるためのもっと"複雑"な攻撃方法があるだろう。あれはなんというか……、迫力だけが取り柄の子供だましの幻影のようにも思えたんだよな……。再生力はあっても、動きが単調すぎるんだ。
イタ公が青龍の力を感じねぇ力……。自惚れていいなら、あれは……異国からの乱入者たる俺の力を見定めようとした挑発…ととれなくもねぇ。その線でいけば、俺達は見張られていたということになる。玄武の力を感じ取ったのか、それともお尋ねものとして蒼陵まで指名手配が行き届いていたのか、また違う理由かはわからねぇが」
『……小僧、その力の源……、目星はついているのか』
「ある程度は。俺らを殺そうとしていたシバが、あまりに淡々と"誰かに作り出された怪物"と戦っていたのと、玄武の力でそれを消した直後に突如態度を軟化して"牙城"に連れようとしていたことから考え、俺が考えられる可能性の選択肢を消去法でいくと、どうしても"その結論"に行き着く。
問題は"奴"が俺達の味方か敵か、青龍がいないことと関係があるのか、だ。その魂胆を探るために、知らぬふりをして乗っかってみようとは思う。俺達はもともと、青龍の武神将を頼ってきたのだからな。それに玄武の武神将として、青龍がいないというありえねぇ事態を見過ごすわけにはいかねぇや。他にイタ公は、なにか感じるものはあったか?」
サクの頭の上で、イタチが神妙な顔つきをする。
『神獣は互いの守護する国に関知せぬのが基本なれど、以前玄武の武神将を通じて見た時より、海で覆われたこの国の地形が妙に思う』
「妙? だがこの国は海の国だぞ? まあ、海の上に土地が浮かぶという特殊さはあるだろうが」