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吼える月
第19章 遮断
黒陵での薬草では、いつでも採りたての瑞々しくしっとりとした状態で、こんもりとした草の山を患部に押しつけるようにして使うのがよいとされていた。
細かく乾燥された状態のものをどうすればいいのか、ユウナは考えた。
ぱらぱらと肌に撒けばいいのか。
いやいや、もっと効果が出るためにはより患部の深層に――。
――お嬢、傷の中に薬草詰め込むのはよして――っ!! 水で戻して布につけて、それをその長い布で上から巻いてくれればいいから。ああっと、それは海水っ!! 水ってあそこにある真水だよっ!! 傷口に塩水なんて死ぬから!!
――お嬢、包帯をそんなぐるぐる巻きにして、患部をきつく締め上げないで!! それじゃあ"お縄"じゃないか。そいつ口から泡出て来たよっ!!
「………」
これではさらに重症患者を出してしまうと、見兼ねてサクはユウナに助力を申し出た。
本来ならば玄武の力で癒やしてやればいいのだろうが、それをせずにいるのは、今はネズミ取りに帆走しているイタチの言葉に同感したからだった。
"たとえ青龍不在であろうとも、青龍管轄下の海の民であるのなら、海の恐ろしさは体に刻ませた方がいい。恐怖を知って強くなれるものだ"
子供は、痛みを知って大きくなる――。
それはハンの教えにも通じていた。だからサクは幼少より、手加減なく鍛え上げられてきたのだ。それがあればこそ、死線を生き抜いてこれたのだ。
"それと。"特殊"な小僧から分立して出来た我の存在は"例外"である。小僧の中の魔……彼の者を押さえる力が多多必要となるため、無駄な力の消費は避けたい。ゆえに小僧が自ずと我の力を増殖して、力の制御ができるようになるまで、癒やしの力は我がしてやろう。小僧がネズミの巣を教えてくれた礼じゃ。もし命に関わりそうな者がおれば、慈愛深い我を呼べ"