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吼える月
第19章 遮断
「なあイタ公。青龍っておおらかな性格って言ってたっけ?」
『いや、おおらかというよりは神経質で気難しく、融通が利かぬ』
そう、ジウと似ていたと、以前も聞いたはずで。
意外にだじゃれ好きな玄武も、神聖な神獣らしからぬ一面を持つけれど、魔と融合していないはずの青龍もまたなかなかの強者だ。神獣とはこんなものなのだろうか。
灯台下暗し――。
堂々たる出現のために、ひとには意識的な不可視状態にさせていた、それが……隣国、蒼陵の神獣。
イタチは特殊ゆえに、サクによって望む"ふさふさ"の形に具象化できたのだと言っていたが、掟に抵触しないのであれば山の方が見るからに迫力がありそうだ。
神獣たるイタチの真の姿がどうであれ。
『我は水の神ながら山に住まう堅固の神獣。青龍は川の神でありながら、大地に住まう包括の神獣。なるほど、なるほど。我に気づかれぬように山に擬態し自らを"龍脈"と化して、蒼陵を外敵から守るだけではなく、生気を吹き込んで鎮護していたとは。考えたのぅ』
"川の神"――。
「はあ!? 青龍は大地の神ではないのか? 今の流れでどうして、川に行くよ!?」
『正しくは、大地に流れる川の神だ。だから水という海に囲まれても、制御出来る力はあるし、勿論大地もその力の範囲内にある。川も水であるからと青龍が我に遠慮して、倭陵ではどちらかといえば大地の力に特化しておったようだが。だから蒼陵は青龍の力によって、一切"地震"やら"地盤沈下"やらがない』
「四神獣仲良し事情は別にいらねぇよ。……というより、地盤沈下がねぇって? 蒼陵は地盤沈下が起きたから、海に浮かぶ人工島で生活をしていると、俺は親父から聞いてたぞ?
大体俺の記憶の地図にある、当時かろうじて残っていた倭陵大陸の輪郭が、今はこんな海原になっているんだぞ? 青龍殿もその地図のような海に面した大地上ではなく、今は完全に海の上。渦の中に移動されているんだぞ?」