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吼える月
第21章 信愛
「その結果が、武闘大会にいつも出ているヒソク殿。出場回数は多いけれど、初戦敗退数も多いわよね」
サクが無理して笑っていることに気づいたユウナが、それに気づかぬふりをしてその横に座り、反対の手でサクの頭をイイ子イイ子と撫でた。
柔らかな髪が指先に擽る感触の気持ちよさに、つい夢中になってしまう。
「俺、戦った時……一撃で勝てました」
ユウナの気持ちよさが伝染したかのようにサクの目も細められ、語尾が喘ぐような息を伴い、僅かに艶めいた響きとなる。
「あはははは。シバだったら、サクも楽しかったでしょうね。サク、シバと戦うとき、凄く嬉しそうだったもの」
艶めいた話題ではないというのに、サクから吐き出される湿った温度の高さに、ユウナの体温も少しずつ上昇して、言葉が震えた。
熱が息づき始めているのがわかるのに、ふたりはわからぬふりをして、とりとめない話題で笑い合う。
「ああ、まぁ……そうですね」
「もしも、同じ武神将同士、堂々と武闘大会で戦えたのなら。見事だったろうなぁ。黒髪と耳飾りを揺らすサクと……青く長い髪を風に靡かせたシバとの闘い。絶対シバだって、女の子達にキャーキャー言われてたわよ。ふたりの闘いは名物になったでしょうね…」
夢のような場面を想像してうっとり顔のユウナ。反してサクの唇は面白くなさそうに尖り、返る言葉が出て来ない。
「……? どうかした、サク?」
「……姫様も、そんな風に思ってるんですか?」
向けられたのは拗ねた顔。じとりとしたその目は嫉妬に揺れ、同時に熱で潤んでおり、ユウナの胸がとくりと反応した。
それは、サクが見せる"男"の顔――。