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吼える月
第21章 信愛
「ああ……、姫様。俺……っ」
噎せ返るユウナの艶香が、酒の匂いが、サクの意識を朦朧とさせる。
朧な意識でわかるのは、自分の牡の象徴が痛いほどに息づいていることだけ。解放を願っていることだけ。
どこかで止めなくてはと思うのに、止らない。
最後までするつもりはなかったのだと言い訳する余裕すら出来ない。
最後までしたい。
繋がりたい。
欲を押えようとすればするほど、求められる男は自分だけでありたいと、もっと求めて貰いたいと、独占欲だけが強まっていく。渇望する。
もしもユウナが、こうして他の男を求めたら。
不意に浮かんだ懸念はより具体的となり、ユウナがリュカに抱かれようとして鍵を外したらしいあの夜のことが、連鎖的に思い出される。
――サク、今夜ユウナを抱くから。
もしもユウナが、何事もなくリュカの宣言通りに彼に抱かれていたら。
ユウナは、もっと乱れるのだろうか。
リュカになら愛の言葉を囁くのだろうか。
……自分には向けられない、女としての愛の言葉を。
「――っ!!!」
「はぅぅ……んっ」
怒りに似た激情に、サクはユウナの胸の狭間をきつく吸い立て、歯を立てた。
許さない。
他の男がユウナを乱すことは。
ユウナは自分のものだ。自分だけのものだ。
他の男の手に渡るくらいなら、いっそ今ここでユウナを自分の手で壊して、自分のことだけしか考えられないようにする――。
サクの心に芽生えた、暗澹たる負の感情。
それは今まで、誠実でありたいと願い続けたサクが押し殺してきたものだった。