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吼える月
第21章 信愛
 

 零れ落ちたその言葉をユウナが理解するより早く、ユウナの手から離されたサクの唇は、拡げられた胸元に埋もれ……、胸の谷間にくねらせた舌を差し込んで愛撫を施す。


 揺れるサクの黒髪。

 はきかけられる熱い吐息。


 それは治療など理由を目的としない、ただの男女の営み。

 そのことがユウナに不安と緊張を与えるが、サクが相手という安心感がそれに勝る。


 サクは自分に無理強いせず、傷つけないと。

 欲に利用するのではなく、ちゃんと女としての自分を見ていてくれるからと。


 脳裏のどこかで、かつて向けられていたリュカの美しい笑顔がちらついた。それはすぐさま銀に覆われ、水が弾けるように霧散する。

 代ってサクの笑顔が、ユウナの空いた隙間を埋めていく。


 悲しみと喜びと――。


 そんな複雑な心境でいたユウナを詰るように、長短つけて胸元に吸い付くサクの刺激は、ちりちりと痛みを持ち、他のことを考えるなといわんばかり。そこに、蕩けた蜜でくるんだ挑発的な瞳を向けられると、触れられる全てが過剰反応して、その痛みすら甘い攻めだとしか思えなくなる。


 形になりきらぬ甘い痺れ。

 呼応するように疼く下腹部。


 目の前のサクがもぞもぞと動きながら胸を口淫し、その様子を熱の孕んだ目でじっと見ているのが、さらにユウナの気を昂ぶらせて。


「あぁ……んっ、サ、ク……っ、もっと……っ」


 いつしか口から離れた手はサクの頭を弄り始め、もっと深層にとサクの頭を押さえつけるようにして、その先をねだった。


「サク……サク……ぅ」


 繰り返しなされる甘い誘惑に、サクの息があがってくる。

 たまらないというように細められたその目は、情欲に充ち満ちて。


 己の男の部分を切に刺激する。


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