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吼える月
第21章 信愛
そんなイタチの心露知らず。
今回に限ってサクはユウナの服を剥ぎ取らず、ユウナを抱きしめながらその肌を上から念入りに愛撫する動きは、イタチには圧死の危険性があったらしく、必死に胸の下に逃げ、魚の"開き"のように平べったくなって息を潜め。
さらにはサクが胸元に長時間顔を埋めてきたせいで、出入り口を塞がれた窮屈な空間は、ユウナとサクの体温上昇に伴い酸欠状態に蒸され、船酔いの名残が抜けぬ体に追い打ちをかけるもので。
もう駄目だとふらふらになって、とにかく掴めるところを掴んでなんとかよじ登り、空気を吸いに出た時に、サクに見つかってしまったらしい。
確かに全くイタチの声は聞こえないほどに嫉妬に暴走していたのは自分の落ち度なれど、身を潜ませていた場所が、なぜにユウナの胸だったのか。
『小僧の胸は柔らかくない上に、下に落ちるではないか。我が踏みとどまる丁度よい"突起"もあらぬ。その点、姫の突起は実に掴みやすい大きさと硬さで、しかも膨らみきった肌の部分は弾力性があり、触るとふわふわして気持ちいいのだ。お前だってそう思うから、あんなにしつこくねちねちと姫の胸をいじるのだろう?』
「開き直るな……っ!! 触るな、掴むな、おかしなこと言うなっ!!
姫様の敏感な"先っぽ"、後でゆっくり唇で強く引っ張ったり歯でカリカリしたり、舌先で激しく揺らして、姫様をもっと愛でて、俺の名前を呼ばせて可愛く喘がそうと楽しみにしてたのに!! 凄く焦らしてたのに!!」
その真情は――。
「いやああああっ!!」
耳もとで叫ばれたものが、またしても唐突に始まった"意地悪"なのだと思ったユウナは、振り向きざま反射的に、サクの頬に平手打ちした。