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吼える月
第21章 信愛
……ユウナには聞こえぬ、イタチの言い分はこうだ。
サクとギルのいる部屋から、(イルヒに掴まれたまま)追い出された後、自らが(なんとか)認めた武神将が、ギルに好き勝手に言われているのを遠隔能力で察し、さらに神獣の力をみくびってサクを試そうとするギルに憤り、サクを助けようと憤然とギルの前にまた姿を現わそうとしたらしいが。
『あの娘だ…。あのイルヒという娘が、なんとか逃げ出した我をまた連れ戻してぶんぶんと……。我は遊んでいないというのに、逃げてもあの娘が喜んで追いかけて来て。だから遊んでいないというに!! 神獣の我はいたぶりの玩具ではあらぬというのに……。ううっ……』
ユウナの頭上で、猫背になりながらさめざめと泣き出すイタチ。小さいふさふさ手で目からぽろぽろ零れる涙を拭っている様を見れば、よほど辛い思いをしていたのであろう。
イタチ曰く、イルヒと通路という出口なき閉鎖空間で"死闘"を繰り広げていたところ、女神ジョウガの救いの如く(シバにより)閉ざされた扉が開かれ、ようやく念願のサクと再会を果たしたものの……。
サクとユウナがどこに入れられようとも、今度こそ絶対サク達と離れるものかと、こっそりユウナの胸元に隠れたようだが、温かくふわふわな心地についうとうとしてしまったらしい。
気づいたらサクが発情し、攻め立ててくる。
声をかけても興奮しすぎているサクは気づかず。切羽詰まっている表情だから、なにかあったのかとしばし傍観しようとしたようだ。
『それに…以前小僧に言われた。姫との時間を邪魔するなと。それに小僧……、武神将の証に我の力を誇示せず、我が好む謙虚な忠誠心を示した。だから我はおとなしくして、隙を見て違う場所に移動しようとしていたのに……』