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吼える月
第21章 信愛
「はああああ!? お前、人の恋路を邪魔するなって!! それじゃなくても俺、すっげぇ頑張っているんだから!! お前本当に、ひとの幸せ守る神獣かよ!?」
するとイタ公……基、人型の玄武は、輝かんばかりの美しい顔で微笑んだ。
『ふふふ、表情豊かなお前といると我は飽きずに楽しい』
「……単純馬鹿っていいたいんだろ」
笑顔が眩しすぎて、目を細めたサクの表情はふて腐れているようにも見える。
『小僧が望むのなら。……と、冗談はここまでで』
「冗談だったのかよ!!」
『お前ががらにもなく、堅い顔をしていたからの。それとも、"だじゃれ"で小僧の緊張を解してやろうか、いっいっいっ』
「……イタ公、その姿でその笑いはやめろ。なんだか泣けてくるから。お前はいい奴だ。励ましてくれてありがとうな。だから儀式。さっさと儀式」
『ん……。なにやら、我の優しさに感激がいまひとつ足りなく感じるが…まあよい。小僧、我の前に頭を垂れよ』
サクの顔が真摯なものへと変わり、恭しくその足元に片膝をついて頭を垂れた。
神獣という…未知数の存在に対する畏怖に萎縮するのではなく、武神将に相応しい凜然とした勇ましさと、恭順たる慎ましさを持ち、玄武が好ましく思う粛敬とした空気を漂わせるものだった。
玄武が満足そうに口元を綻ばせたことをサクは知らず、そして玄武の手がサクの腕輪と、耳飾りに触れた。
『我、この者を玄武の武神将と認め、そしてこの者が認める者に我が力によりて、強く結びつけることを今ここに誓いたり』
腕輪と耳飾りが青い光に包まれる。
『我が祝福せしものを、契約の証とせよ』
そしてサクの意識は、突如浮遊した。