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吼える月
第21章 信愛
「……"妬いて"貰えるのなら、俺は"今は"その"多分"で十分です」
「妬いてなんか……っ!!」
「じゃあ色街行こうかな」
「ぶ、武神将がはしたないわ!! ハンだってそんなところには」
言葉は責めているが、ユウナの表情は泣き出しそうなほどに必死だ。
それをわかっているサクは、顔がにやけるのを懸命に押し止めている。
「親父には溺愛するお袋がいましたから。だけど俺、溺愛する相手がまだこっち見てくれてねぇんで、寂しいんです」
「う~~っ」
「嘘ですよ、行きません。そんな理由で姫様急かしたり脅したりもしませんから。だけど"今は"、の話ですよ。姫様の頑張りに、もの凄く期待しての譲歩です」
「……サク、偉そう」
「ええ、そりゃあ。偉い武神将ですから」
「………」
「冗談ですよ、そんな白い目で見ないで下さい。姫様、俺……姫様以外の女はどうでもいいんです。妬かれるのは嬉しいですけど、見当違いですから。
俺は……昔も今も、姫様だけのものです」
サクの表情がやるせなさそうなものに変わる。
「……言って下さい。どこをどうされたいですか? 姫様が望むことを……」
「ぎゅっとして」
「ぎゅ……だけ?」
ユウナの即答に、少し不満げな声が返る。
「"今は"。だから今はぎゅっとして」
「……御意」
サクの匂いと熱に恍惚な心地となりながら、ユウナはサクの背中に回した手に力を込める。
もっともっと、サクを感じたい――。
「満足頂けました?」
熱っぽい艶めいた声が気持ちいい。
「もっと」
先刻までのもじもじとしていた姿はどこへやら。素直に貪欲なまでに自分を求めてくれるユウナがますます愛おしくて、くすりとサクが優しく笑ったことに、ユウナは気づかずして。