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吼える月
第21章 信愛
「姫様、真っ赤な顔を見せて?」
「……真っ赤じゃないもん」
サクは見ずして、自分がどんな状況なのかわかっているらしい。
愚鈍でよくハンに怒られていたくせに、こういう時は聡い。
「……"もん"なんて俺を悶え殺すつもりですか。ねぇ、姫様……」
そして意地悪状態に入れば、サクは容赦なくなる。
だから――。
「サク、好きじゃない女には、どんなことしたの?」
――俺、好きな女の身体をこんなに愛したくてたまらねぇと思うのは姫様が初めてなんで。
ユウナの逆襲に、サクは顔を引き攣らせた。
その反応に、心ならずユウナの気分が損なわれる。
「色街ではどんなことをしていたの?」
片眉を吊り上げたユウナが刺々しい声を放ちながら、サクから身体を離して、詰るように見据えた。
「姫様……ええと…」
「サク、目……泳いでる」
「お、泳いでませんよ」
「泳いでる!!」
「泳いでません、よく見て下さいっ!!」
サクは憮然とした顔を近づける。
むくれたような顔のユウナもまた顔を近づけ――。
「――っ!?」
サクの頬に口づけをした。
ユウナの顔は真っ赤になったが、依然ふくれっ面だ。
「過去のことはもういい。だけどこれからは……あたしだけがいい」
「ひ、姫様?」
「そ、その……まだあたしは心が追いついていないけど。だけど多分……追いつけると思うから。だから……」
「それって……?」
「た、多分の話よ、多分の。絶対性はないし、いつになるのかもわからないし!! だけどその……」
今度はサクがユウナの頬に唇を押しつけ、嬉しそうに微笑んだ。