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吼える月
第21章 信愛
改めて見る、見事なまでに逞しく鍛えられたサクの身体。
服をはだければ尚一層、男としてどれだけ素晴らしい肉体を持っているのかがわかる。
隆々とした胸筋は艶やかな肌で覆われ、自分のように、やたらふわふわとした無駄な肉などついていない。
引き締まった精悍な肉体――。
逞しい男の身体――。
しっとりと汗ばんだ熱い肌と、匂い立つ男の香りにユウナはくらくらと眩暈を感じて、サクの胸に唇を押し当てたまま、静かに目を伏せた。
唇が感じる……、どくどくとした生を刻む臓器の音。
これが自分に捧げられたと思うだけで、至悦に身体が奮う。
この身体で自分は抱かれたと思うと、たまらなくなる。
治療なんていう名目ではなく、ただ単にこの身体に包まれたいと切に願うユウナは、その衝動の影に隠れたものが肉欲なのか女としての情なのか、その正体はわからなかった。
追求する気が霞んでしまうほどに、こうして生きているサクを触れられることが嬉しくて、愛おしさが募るのだ。
たとえ唇でもサクの"生"を共有して、一体化するように自分の鼓動もサクの鼓動の早さに近づいているのがわかれば、より強い繋がりを得た感覚に心が震えるのだ。
たとえそれが、自己満足的な錯覚なのだとしても。
サクの胸板から唇を離して頬をすり寄せると、サクが赤子をあやすように後頭部を優しく撫でてくるのがわかった。
ゆらゆらとゆりかごのように揺らされているようだ。
サクと過ごす、穏やかな"静"の時間――。
それが心地よくとも、身体の芯は"動"の時間を待ちかねていた。
「凄い心臓の音……」
ゆっくりと目を開けたユウナの顔には、微睡んでいるようにも思える……サクへの愛おしさを強めた女の艶が滲み出ていた。
「そりゃあ……姫様にそうされて、平然となんてできません」
ゆったりと甘い声音を放ちながら、サクは声以上に甘く蕩けた顔で微笑んだ。
ユウナを惑わすような魅惑的な笑みで――。