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吼える月
第21章 信愛
「平然と、余裕そうに見えるのに」
「男の矜持です。だけど俺、心は隠せませんから」
「このどくどくいう部分が、サクの"心"?」
「はい。姫様に触れられただけで、飛び上がって喜ぶんです。昔も今も、これからも……。どくどく動いている限り、俺の心は姫様のものです」
「あたしの……もの……」
ユウナはうっとりとした表情で、またサクの胸に唇を寄せた。
どくどくと、忙しいまでの激情を告げるその場所に。
「サクは……あたしのもの……」
確かめるように、ユウナの指先もサクの肌を這う。
「……っ」
サクが身体が、ひくりと動いた。
ユウナはそれを感じながら、自分が彼になされたように、唇だけではなく舌を這わせてちゅっちゅと肌を吸い上げ、そして指先の戯れを無意識ながらも確りとした愛撫の律動にし、どう? と言わんばかりにうっとりとした顔でサクを見つめた。
そんな彼女に返されるのは、とろとろにとろけたような熱く潤んだ瞳。
従順であろうとユウナになされるがままの態度とは裏腹に、瞳の奥に見えるのは滾るような、周りを焼き尽くしそうな欲情の炎。
その炎はサクの意志によって表に出ることはなかったが、それを見いだしたユウナの欲は否が応でも煽られ、サクの身体に触れて愛でる行為がやめられなくなった。もっとを望んでしまった。
サクの身体など昔からよく見て来た。
一緒に風呂に入ったこともある仲だというのに、サクが自分より背が高くなり、肩幅も広くなり始めた頃から、ユウナは異性であることを意識した。
それでもサクが、姫様姫様と懐いてくるから。
なにも変わらず笑顔を見せてくるから。
だから自分は勘違いしたのだ。
サクは異性でありながらも、同性のような希有な存在なのだと。