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吼える月
第23章 分離
テオンは横を向いた。
そしてしばらくの沈黙の後、ぼそりとテオンは呟いた。
「お兄さんが馬鹿なのは、フリだったの?」
「残念ながら生粋の天然……なに言わせるんだよ、論点ずれるだろう! ああくそっ、返事がないということが返事だと思っていいな?」
「勝手に、思えばいいよ」
テオンは顔をそむけたまま、ふてくされたようにサクの前であぐらをかいた。それはどことなく、礼儀正しさを見せていたテオンにしては珍しい態度であったが、サクはその態度も故意的に悪ぶっているように思えた。
彼は、元々育ちがいいのだろう。
逃げる気もなく、あえてサクの質問攻めを受けるつもりでいるらしい潔さに、サクは今まで以上に好感を持った。
……どうしても、年下としか見えなかったが。
「もういいよ、色々とわかってしまってる人を相手に、隠そうとする分だけ無謀だということ、僕もわかるし。それが猿お兄さんというのが、なんとも複雑だけど。シバならわかるけどさ……」
「……おい、なんだその偏見」
だがテオンは聞いていないようで、大きな嘆息をついていた。
「まさか、あの亀が証拠として暗躍するとはなぁ、たかが亀、されど亀。シバも、まさかシバの方がジウの息子だと僕、まるで思ってなかったし。僕の目や考えは、まだまだ甘いんだなあ。それとも、称えるべきか。どんな隠蔽も見抜く、さすがは黒陵。玄武の使いの亀だって」
「見抜いたのは俺だし、イタ公は使いじゃなくて玄武そのもの……」
「はいはい、もういいよ冗談は。気が滅入っている時に、笑えないから」
「別に笑いをとろうとしているわけじゃ……」
「はぁ……っ」
「聞けよ、こら」
テオンは本当に悔しそうだ。