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吼える月
第23章 分離
「なっ……!!」
これには動揺を隠せなくなったらしい。
「俺がわかってなかったとでも?」
「な、なんで……」
テオンはまるで恐ろしいものでも見たかの形相を、サクに向けた。
完全に、そこまでは悟られていないと思っていたようだ。
「俺武神将だから、と言いたいところだが、理由はもっと簡単だ。サメに襲われた後の、あの青龍もどき怪物に子供達が複数操られていたというのに、お前は操られていなかった」
「は!? それは僕だけじゃないだろう!? お兄さんは武神将だから特殊としても、お姉さんだって、イルヒだって、シバだって……」
「そこさ。姫様は、神獣の守り刀を持っていた。イルヒは胸にイタ公を抱いていた。女だからという共通項は、シバが操られていない理由にはならねぇ。
シバは俺と同じに、姫様やイルヒのように道具なくとも、流れる血に神獣の加護がある。と考えれば。テオン、お前は?」
サクの目が射るような鋭さを見せた。
罠にかけた動物を狩るような、そんな獰猛さを秘めた瞳――。
「考えられるのは、お前に神獣の力があるということ。だがあの怪物に、俺もイタ公も神獣の力を感じないばかりか、聖なる神獣の力にすぐ掻き消された」
「………」
「俺は、神獣の力ゆえにシバに共鳴してもお前に共鳴することはなく。なによりお前には、シバのようにイタ公を"イタチ"として見えてなかったのが、神獣の力を持っていないという動かぬ証拠。
……再度問う。だったらテオン。神獣の加護なく、あの怪物からお前だけが操られずにいたのはなぜだ」
「………」