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吼える月
第23章 分離
「いない? だけど大人達は青龍殿に連れられて、そしてジウ殿の命令がいまだ次々に蒼陵の街々に伝わっているのだろう? 不在というのは……」
「だけどいないんだよ。だから何度も時間を変えて探索したけど、どこにもいない。だけどね、塵や埃がないんだ、内部に。誰か清掃をしている」
サクの眼差しが険しくなった。
「それにね、父様の部屋の心臓の薬が、減っているんだ」
「確かか?」
「あれは、黒陵の薬草を煎じた特殊なものなんだ。僕、密やかに黒陵で仕入れては、こっそり青龍殿に忍び込んだ時に在庫を増やしてみたんだけど、やはり減っているんだ」
「じゃあ、少なくとも祠官は青龍殿居るということか?」
「としか思えないだろう? 僕が見えないのか、それとも僕がいない時に戻ってくるのか。戻ってくるとしたらどこから? 僕が海を巡回している限り、青龍殿は渦巻いた結界が張られたまま、船の出入りはないんだ」
そして項垂れた。
「こんなことしてるって、兄貴達にばれたら……ジウの密偵だって疑われる。折角僕、生きられる場所を見つけたんだ。必要とされる場所を。だから嫌なんだよ、またそうした場所を無くすのは……。
だけど父様が心配で……。父様の姿を少し見るだけでもいい、安心したいんだ。青龍の力なんて、もう使える体力はないはず。もしかしてジウに利用されているのかと思えば……。蒼陵が乱れてるのは、父様に異変が起きたからじゃないかってそればかり。だから僕、お兄さんに協力する。ねぇ、僕も一緒に行動させて? 僕場所がわかるから、きっと役立つと思うんだ。もうヘマしたり、お兄さんを騙したりしないよ」
テオンが素直に話したのは、共に青龍殿に乗り込み、謎を解き明かしたいかららしい。
「3日の日没までに、お姉さんのもとに笑顔で帰るために」