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吼える月
第23章 分離
◇◇◇
艶々とした純白の毛並み――。
ユウナの目の前で、湯の入った大きな盥桶に、綺麗な毛を披露する白いイタチが悠々と浸かっている。
ねそべり、ぷかぷか浮かび、潜ったり。その湯の温度も上々のようで、長らく湯に戯れながらも、ぐぅ~ぐぅ~とどこか悲痛に鳴り響く腹の虫は、気にしていないようだ。
くりくりとした黒い目。
すらりと伸びた長い胴体。
時折頭上にちょこんとついている耳がぴくぴく動く。
湯にまどろむのか、小さな鼻をひくひくさせて欠伸をする仕草を見ると、ユウナの胸はきゅんきゅんとする。
なんて愛らしい小動物なのだろう。
これがあの小さな手乗りの亀だったなんて。
両極端の姿が、幼少の頃から父と共に祈りを捧げてきた神獣の新生した姿だと知らず、イタチ姿に愛玩動物としての愛情を注ぐユウナは、サクのいない寂しさをこのイタチの愛くるしさに癒やされながら、イタチがのぼせないようにと気を使い、手で扇いで微風を送っていた。
ひとりの動きは微々たるものなれど、イルヒやイルヒによって紹介されてた大勢の子供達も、なぜ亀に風を送るのかわからないなりにも、そこが玄武の国の姫しかわからぬ不思議な行為なのだと、神妙な気分でユウナの真似をして、結果、イタチの毛先が気持ちよさげに揺れるほどの風が生まれる。
ただ大勢が同じ仕草をするとなれば、それは異様な風景でもあった。
だがそのことに誰が咎めることもなく。
イタチはチャプチャプと水飛沫を飛ばして湯に戯れながら、満足げな声でユウナに告げた。
『ふぅ、楽園楽園。疲弊した我の気力が回復してくる』
当然ユウナしか聞こえない。