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吼える月
第23章 分離
イルヒの"好きな人"――。
シバか兄貴だろうと予想はついていても、ユウナもまた、相手がどんな年下であろうとも、そうした恋愛話をしてきたことがなかったために興味を持ち、イルヒに従うことにした。
ふたりしかいないというのに、ふたりは片隅に身を屈めて隣り合って座り、こそこそと小声で話し込む。
「あたいが好きなのはね、テオンなんだ」
そしてイルヒは顔を両手で覆った。
「まあ、テオンなの!?」
それは意外でもあり納得でもあり。
「だけどあたいの片想い。テオンは優しくて面倒見いいけれど、時折遠い目をしていて。あたいと話していても、あたいの奥のなにかを見ているようで。……ねぇ、お嬢はどうやって猿を好きにさせたの!?」
「うっ……」
それは本人に聞いて貰いたい。
「やっぱり身体……がいいのかな。だけどあたい、胸はぺっちゃんこだし……。それでもテオンは喜んでくれるかな!?」
「う、うーん…。どうだろう…。まだ早いと思うけれど……」
「お嬢はいつから猿と?」
「う……。イルヒの年ではないのは確かね」
睦言を聞かれているだけに、言い逃れできず苦しい言葉しか出せない。
「もうちょっと大人に、やっぱり胸が膨らまないと駄目かぁ。猿はお嬢の胸が大きいと喜んでる? 男ってそういうもん?」
きつい。
答えるのが辛い……。
「あ、あたしは女だから、ん……どうだろうね…」
汗をだくだく流してぎこちなく笑うユウナに気づかず、イルヒの攻撃は止らない。