この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第23章 分離
「イルヒは、テオンのどこが好きなの?」
質問に答えぬためには、別の質問にすり替えるしかない。
ユウナの率直な質問に、今度はイルヒが狼狽えた。
「どこ、どこって……どこだろう!? どこかな?」
「あたしに答えを求められても……」
苦笑しながらも、真っ赤になっているイルヒは、純粋に可愛いと思う。
男のような身形をしながらこの集団の中を生き抜いているイルヒ。どう見ても天真爛漫な子供なのに、テオンを想うとここまでしっとりとした少女に変わるのか。
「ええと……全部、好きなんだ。どこがっていうよりも、どこも嫌いなところがないというか」
ユウナはふと、先ほどイタチに聞かれた質問を思い出す。
――嫌いでないのなら、好いておるのだろう?
イルヒと同じ答えが、自分の中にあった。
「どういう風に、好きだと感じるの?」
ついつい、身を乗り出して聞いてしまう。
「その……あたいを女の子扱いして、守ってくれるのがじんときて、格好いいなあとか」
サクに対するものと同じだ。
「傍にいれば、心がぽかぽかして、今みたいに離れると、心が寒くて。早く帰ってきて欲しいって、凄く思う」
これもまた同じ。
「ね、ねぇイルヒ。例えばテオンの笑顔に胸がきゅうと鳴ったり、触れあうとドキドキしたりするの?」
「そりゃあするよ。好きだから。あたい…テオンのお嫁になりたいもの」
「お嫁さんになりたかったら、そんな気持ちになるの!?」
ユウナはイルヒの肩をがしっと掴んだ。
「なに突然!! お、お嬢はどうなのさ!! 猿に対して、どう思うの!?」
「あ、あたしは……」