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吼える月
第23章 分離
「うわあ、なんだよこの足の傷!! シバ、これは座礁した時に出来た傷なのか!?」
「ああ、この傷をなんとかしない限りは足を切り落とさないと命がない」
「兄貴、手はないの!?」
「ここまでのものなら、どの薬草が役立つのかわからん」
薬草の粗方の知識は、ハンから教えられていた。
薬草は、黒陵国の名物だからと。
それがどこまで役立つかわからないけれど、役立てる知識はあるかもしれない。
今、自分が動きさえすれば、リュカの生の可能性は僅かにでも高まるのだ。
「死んじゃうの、このひと!? こんな綺麗な顔をしているのに」
「出来れば殺したくない。オレの推測通りなら、この男は――」
「シバ、足を切り落とすか。死なないよりはマシだろう。切り落としたショックと失血で、どうなるのかはわからんが、今よりも生存率は高まる」
死んでいないということは生きている。
自分の動きひとつで、リュカの生死は決まる。
足を切り落とす危険を回避できるかもしれない。
「サク、サク……あたし……っ」
――ああ。やったな、僕達!
――すげぇな、姫様とリュカがいれば、無敵だっ!
「………っ」
だから。
『姫、姫聞こえぬのか!? あの者が纏う力はなにかおかしい。不用意に近づくではない、姫。姫!!』
だからユウナは――。