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吼える月
第23章 分離
「え、その男、死にそうなの!?」
姿なきイルヒの声に、心臓が縮み上がる。
死に、そう?
リュカが?
――ふふふ、今日も元気だね、ユウナ。
――僕は……お前が死ぬまで、憎み続ける。
リュカが、死ぬ――?
――姫様。
ねぇ、サク。
ねぇ、あたしはどうすればいいの?
――ああ。やったな、僕達!
――すげぇな、姫様とリュカがいれば、無敵だっ!
――ええ。無敵よ、あたし達は!!
蘇る。
消さねばならない、眩しかった過去が。
愛と平和に満ちて、疑うことをしらずにいた無垢な昔が。
リュカが木っ端微塵にした思い出が今――、
リュカという名により再び紡がれる。
神獣の声が届かぬほどに。
『ん……、なんだこの力。神獣たる我の力を阻むか。なにゆえ!! なにゆえ同胞の力が、我の力を遮ろうとする!! どの同胞の力か!! なぜ我が特定できぬ!! これなら、これならまるで我が主の……』
サク、あたしはどうすればいいの?
『小僧になにかあったのか!? 小僧、なにがあった。小僧!?』
――あははは、姫様。
……サクならどうする?
サクなら、敵を救う?
それとも、敵だからと見殺しにする?
あたし達の今までの友情をなかったことにして。
植え付けられた憎しみを、今がいい機会とぶつける?