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吼える月
第23章 分離
もう、目の前でひとが死ぬのは嫌なのだ。
目の前にいて、助けられない自分をなんとかしたいのだ。
相手がどんな者であれ、命は平等。
生き続ける多くの命に、自分の命は救われてきた。
生きればいい。
あたしやサクお父様を裏切ってまで、得ようとしたものがあるのならば。
船出の時に助けてくれた理由はわからない。
これからなにを起こそうとしているのかわからない。
だけどリュカの野望は事前にサクがあたしが止めてみせる。
あたしの力は微々たるものだろうけれど、強くなったサクの力を思い知るがいい。
愛も友情も捨てて、復讐の道に走るというのなら、失ったものの大きさを感じ入るがいい。
――ああ。やったな、僕達!
――すげぇな、姫様とリュカがいれば、無敵だっ!
――ええ。無敵よ、あたし達は!!
"無敵"になれない現実を憂うがいい。
そう、貴方には、あたしもサクもいないのだから――。
それでも力を得ようとするのなら、"昔"を無に還したことを嘆き後悔して、手放したあたし達の存在の大きさを思い知るがいい。
そのために生かすんだ。
それがあたしのやり方――。
今、あたしはここで借りを返そう。
あたしは恩知らずではない。
あたしのすべてを否定した、元婚約者。
別の女と婚姻した、光輝く――。
「――っ?」
ユウナは思わず、訝しげに目を細めた。