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吼える月
第24章 残像
「勿論。僕だって大人だし。倭陵の男なら、普通16歳で童貞卒業と言われているでしょう? お兄さんは何歳? モテそうだから、結構早かったんじゃないの? 相手、お姉さん?」
「………」
「お兄さん? ちょっと…なに固まってるのさ。お姉さんには言わないよ、男の内緒話だよ?」
「………」
「まさか……」
「……言うな」
「だったら、ちゅう。唇にちゅうくらいは……」
「………」
「なにやってるんだよ、お兄さん。あそこまでお姉さんに色々していたくせに、なんでまだ!? お兄さん、できない病気!?」
途端に、テオンを肩に乗せているサクは吼えて、身体を大きくぶるぶると振った。
「だああああああ、うるせえっ!! 言うなっ!! 俺は至って健全な19歳、どこもかしこも元気でたまらねぇっ!! 事情があるんだよ、事情がっ!! ああ、もう……っ、人の傷口に~っ、そこから振り落としてやる!!」
「わあわあ、なにするんだよ、お兄さんっ!!」
「お前なんて嫌いだっ!!」
「お兄さん、お兄さん……っ」
「俺は俺のペースで、姫様を……っ、いいんだよ俺は焦らねぇっ!! 16歳が普通だろうと、なんだろうと!! 治療でも治療じゃなくても!! 俺がばーんと弾け飛ぶのは、両想いになってからと決めてるんだ!! そのためにちゅうもしないで、願掛けしているんだ。それくらい真剣で必死なんだよ、俺はっ!!」
「わかった、わかった!! お兄さんの切実な片想いはわかったから。だから落ち着いて、ねぇ僕が悪かったから!!」
「絶対お前面白がってるだろ!! 正気かつ乱れる姫様相手に挿れるどころか、イクことすらできずに鍛錬ばかりして、死ぬ気で昂ぶりを鎮めている俺を、男のクズだって嘲笑っているだろ!!」
「してないって、なんでそこまで卑屈になるのさ!! お兄さんったら!!」
サクの抑えられた感情が暴走してしまったらしい。テオンは必死に足をサクの首に巻き付かせて、振り落とされないように頑張っているものの、相手は鍛錬が趣味になりつつある武神将。
そこで今度は泣き落としに策を転じた。
「ぐすっ、お兄さん……。肩車って僕初めての経験なんだよ。折角お兄さんのこと、本当のお兄さんのように思えて心打ち解けて内緒話しているのに、嫌いってなんだよ……」
ぴたりと、サクの動きが止まる。