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吼える月
第24章 残像
美妙な輪郭や、憂いを含んだような寂しげな表情までそっくりで、幻を見ているかのような気分だったが、ユウナはこれがリュカではないという確信があった。
心身がリュカだと反応していないのだ。
動揺はするけれど、本人だとは感じていない。
「ここは我々の住居です。貴方様の乗った船は座礁して怪我をなされ、我々はお助けしたまで」
それを信じるのなら、目を覚ました男の前で畏まっているシバやギルの口にする名の通り――、
「――皇主三男、スンユ様、……ですね?」
「……そうだが、お前達は……?」
この男は、リュカとは違う高貴な血を持つとされる、別人。
ユウナは、名を名乗るギルとシバを見ながら、ふと……男からの視線を感じて、再び目を合わせた。
視線が絡んだ瞬間、痺れるようななにかを感じたが、やはりリュカに邂逅した時のような烈しい感情はわかない。
ここまで、そっくりな他人がいるものなのだろうか。
瞳を揺らすユウナを、リュカと酷似した男――スンユは、冷ややかにも思える"他人"の目線で、じっと見つめていた。
それがなにか空々しい、敵意にも似たようなものに感じて、ユウナは目を細めて警戒の色を強く顔に出しながら、イタチの尻尾をぎゅうぎゅう引っ張ってしまう。
スンユの目が、イタチに向けられ、僅かに細められた。
「――なるほどな」
なにが"なるほど"なのかわからぬユウナが、イタチに意見を求める前に、
『我は少々、"襟巻き"になっておるゆえ』
イタチは会話拒否。
だが少し焦ったような口調には、スンユに"なにか"を感じたのだろうと思うユウナは、ますます警戒を募らせた。