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吼える月
第24章 残像
「はい? 構わないわけないでしょう。なんでそうなるの」
「そんな目を吊り上げずに。そうなる可能性を捨てきれぬことこそが、奴の弱点。それこそが、娘さんに利用価値があるということだ」
「意味がわからないわ」
「わからないということは、そういう可能性を考えてもいないという……あははは、それはそれで面白い。ふむ、やはり娘さんを使うのが効果的だ」
ユウナには、自分を道具だと断言する目の前の男が、リュカなのかリュカではないのか、わからなくなっていた。
リュカと同じ顔の男が吐き出した言葉は難解すぎるのだ。サクならば、直感でなにか感じ取れるのだろうか。
その他ここで意見を求められるものは、イルヒら子供を除けばギルやシバしかいないが、元々彼らと共にいるのは利害関係を一致させるための、シバの策略で。
ジウに攻撃したい彼らにとっても、自分やサクは道具なのだ。
そして自分達は、ジウへの攻撃は出来るなら避けたいと思う側にいる者であり、ギルやシバと同じ立場に立っているわけではない。なんとも中途半端な立ち位置なのに、正当な意見を期待していいのか自信がなかった。
それ以外に、頼れるものがあるとすれば――。
ぺしっ。
"襟巻き"の頭を叩いても反応しない。
ぺしっ。
少し反応はあったようだから生きてはいるようだが、相変わらず人間語を話すイタチには戻らぬ気らしい。
長い尻尾を掴んで引っ張ってみたが、意地でも動かぬ気ようだ。