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吼える月
第24章 残像
「使えない? え、使おうとしてたの?」
「使おうとした直前、閉まってる扉の真ん中に、ぼんやりと光る変な符を見つけてさ。こんな感じで力の波動を拡げたら……ってお前は見えねぇか」
「あ……、なにか確かにぼんやりと見える。あれは……神獣文字…?」
ゆらゆらと揺らめくような玄武の力を身体に纏ったサク。その言葉を上書きするように、テオンは前のめりになって、目を眇(すが)めた。
「神獣文字だかどうだか知らねぇけど、お前見えるのか、あれ。普通は見えねぇんだぞ、神獣の力を持つ者以外は……」
「はっきりとではないけど……。すごく集中しなきゃ見えないけど……だけどそんな模様、あったかな、この扉に……」
「ああ、もしかして俺が玄武の力を持つから反応して光り出したのかもしれねぇな。青龍の力がねぇにしても、テオンは青龍の祠官の血を引く特殊な血筋だから、見えるのかも知れねぇ」
「僕祠官になりそこねたのに、そんな時ばかり……」
サクは片手を上げて、どこかいじけた口調のテオンの腰をぽんぽんと叩いた。
「話戻すが、あれは神獣の力と相性悪いものらしい。……イタ公に無理矢理植えられた知識によれば、あれは『反射の陣』。迂闊にあれに力を放てば、あれ自体が俺達を攻撃するものとなる」
そして。
「……ん? 神獣文字で書かれた…『反射の陣』?」
「……ん? なんで神獣を祀る青龍殿で、神獣の力の攻撃を警戒するんだ?」
テオンとサクはそれぞれ考えこみ、場に沈黙が流れた。