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吼える月
第24章 残像
神獣の力封じ――
サクは、青龍の祠官か武神将が、同じ青龍の力か、あるいは同胞である他3神獣の力が、青龍殿を攻め込むと思い込んだことが、どうしても腑に落ちなかった。
ありえない。
女神ジョウガが倭陵大陸に使わした、玄武、青龍、朱雀、白虎の4神獣は、どれが上だということなく、ひたすら同等の立場にて、その加護によって4国は同等の立場で存続していると聞く。
女神ジョウガの血を引くとされる子孫が皇主の家系。皇主は大なり小なりジョウガの力を引く者であり、だからこそ4神獣の加護ある4国を率いることができるのだ。
皇主の支配が届かぬところで、4国の私欲に満ちた諍(いさか)いが起こることはありえないし、そうした動きがあるということすらサクの耳には届いていなかった。記憶の中のハンも、それに対して懸念していた様子はなかったように思う。
あの凶々しい赤い月が悪影響を及ぼしたにしても、この青龍殿が移転改築されたのは、それより前のことだ。
なにゆえ蒼陵国は、仲間である者達の力に警戒しているのか。
ジウ自体、ハンとも他武神将とも親睦を図っていたのに。
……それとも、ジウと祠官の仲間割れ…なのだろうか。身内のお家騒動に備えて…と考えるにも、なにかしっくりとこないサクだった。