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吼える月
第25章 出現
「は、え!? 蒼陵の警備兵!? なんで、移転した時解雇されたはず…」
「ははは、表向きと真実は違うってことだ。テオン、俺から離れるなよ」
青龍の模様が刻まれた青い鎧をつけた兵、三十あまり。
大刀や槍、弓などで武装はしているが、中央の近衛兵のように輝硬石の防具を身につけていなければ、武器の構え方からして、さほどの武芸熟練者でもないことを、サクは見渡すだけで見抜いた。
この程度ならぱ、百人いてもハンには到底敵わない。餓鬼の餌食となった警備兵の副隊長シュウでも軽く蹴散らせる相手だろうと推測する。
「お兄さん、どうしよう、こんなにたくさん……逃げられる!?」
「冗談!! ここは倒す!!」
「だけどたくさん……」
「玄武の武神将をなめんなよ!!」
「かかれ!!」
司令官のような男の声と同時にサクは咆哮すると、鋭い刃先を向けて走り込んできた兵に自ら突っ込み、前に出した片手で地面を叩くようにして前方に跳ねた。
宙にて捩るようにして旋回させて体勢を保つ足で、同時に複数の兵を蹴り飛ばし、その際足先で真上に蹴り上げた槍を手にすると、着地と同時に槍を両手で回しながら別から近寄る兵をはじき飛ばす。
その間に複数の兵がテオンに同時に武器を突き出すのを見たサクは、地面をすべるようにして低姿勢からテオンの元に駆け付け、そのままの姿勢で沢山の武器を槍1本で下から押し上げた。
サクの腕力に負けた兵が武器を手放してよろけたところに、サクは槍の柄の部分で次々に兵を叩きのめして、地面に積み上げていった。
向かってくる兵のどんな勝手も許さない。指一本テオンに触れさせない。
沢山の兵はサクの攻撃によって瞬く間にその数を減じていく。
「お兄さん……すごっ」