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吼える月
第25章 出現
「普通の大地に人が住む国ならわかるよ!? だけど蒼陵は海なんだ。海の中にこんなものを作れるはずが……」
「蒼陵は、青龍が守護している国だ」
サクは低い声で言った。
「その昔、蒼陵だって黒陵と同じ陸続きとなった国だった。それが水害で街が沈み、生き残った蒼陵の民は海上の生活を強いられている。つまりテオン。蒼陵は、海の中に広い土地はあるんだ。元々住んでいた土地が」
「それを青龍が守護してるって!?」
「イタ公曰く、海の下に青龍がいるらしい。それに近いところの街となれば、不可能なことも実現可能だろうさ。だがひとつ腑に落ちねぇのは……」
サクの切れ長の目が怪訝に細められる。
「この街にも神獣の力が感じねぇ」
「え……?」
「イタ公連れてくればはっきり結論は出たろうけど、少なくとも俺は、シバに感じた程度の神獣の力ほども、この場所から感じねぇんだ」
「だったら、神獣の加護なしにこの街が成り立っているというの? ……って、お兄さん大丈夫?」
テオンが突然ふらついたサクを支える。
「ああ。下りてくるときからなにか足が……身体が重いんだ。熱出てるわけでもねぇし、テオンを肩に乗せて走り回ってた疲れか?」
「うっ……。僕そんなに重くない…と言いたいけれど、確かに僕お兄さんの上が心地よくて乗り過ぎてたよね。ごめんよ、少し休憩しよう?」
「ああ……と言いたい処だが、テオン。俺の後ろに」
サクの顔が急に警戒に満ちたものとなる。
サク達を取り囲むようにして、突如現れたのは……、