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吼える月
第25章 出現
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今までテオンを肩に乗せていたサクは、今青龍の武神将であるジウの肩の上にいる。いい大人が易々と抱えられている現実、幾ら不可抗力的に自由が奪われている身だとはいえ、サクには嘆かわしいことだった。
もしハンが生きていてこれを見たら、腹を抱えて大笑いした後、"大人"になるための修行として、苛酷な鍛錬を申しつけただろう。
ネズミ大好きなあのイタチだって、赤い目となりシャーッと口を開けて、情けない武神将を鍛えるためだと、無理難題言い出しそうだと思えば、この場に鬼教官達と、そしてユウナがいなかっただけでも幸いと言うべきか。
兵に取り囲まれながら心配そうにこちらを見上げるテオンと、なにか顔を合わせづらく、観察に専念した。
地上に似せた海底都市――。
ここがただの気まぐれで作られたわけではないだろう。
なぜ大人達だけがこの街に来ているのか、なぜ姿がないのか……。
空に燦々とした光を落とす陽がなくとも、昼間のように明るく澄み切った空に、まるで波のような鮮やかな青色の揺らぎが見えるのも、目が慣れるにつれてサクには気にならなくなってきた。
青龍殿での仕掛けを抜けるのに時間がかかりすぎて、実際地上が朝をを迎えているのか定かではないが、この街においては時間経過を告げる天体がないために、もしかすると一日中明るいのかもしれない。あるいは突然ぱっと昏くなるのか。
ゴォォォォ……。
依然聞こえ続けている低い轟音。
音はジウが向かっている方向にある…高い塔がある方角から響いている気がするのに、間近に響いて聞こえるのは、街のところどころにある大きく土地が窪んでいる部分を中心に設置された、幾多もの青い石碑に反射して響いているからで、それが地鳴りにもにた轟音を臨場感溢れたものに仕上げているようだった。
サクは神獣の力を封じられてしまっていた。だからこの空間や渦の出現に関係する不可解な音から、シバに感じたような他神獣の力を感知できない。感じ取れないのは、感知能力がなくなったせいなのか、元々神獣の力がないのか、判別すらできない。