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吼える月
第25章 出現
――祭壇が建立されるのは四神相応の地、即ち"作穴須趍吉以避凶"。
"作穴須趍吉以避凶"。
サクは再度この街を見渡す。
高台から流れ込む川、左右対称に扇型に広がる道。取り巻くように作られた家並。そして陥没部分。
……ハンに教えられていたもので、閃くものがあった。
「随分とやかましい音ですねぇ」
サクはジウに声をかけてみる。
「だから海上の渦が引っ込んでしまうんですか?」
ジウは笑う。
「"これ"の難点である騒音は、いかに動力を強めても弱まらない。それが課題のひとつでもある」
"これ"。
動力。
「それは、俺が地上で一切感じ取れなかった青龍の力で動いているってことですか? 力を失った青龍は、どうすれば他神獣に知られずに、こっそりと動いてくれるんですかね?」
イタチは青龍の力を感じられなかった。
それは真実――。
「我が国の神獣が力が失っているとは、面白い冗談だ」
笑って誤魔化された。
だが微妙に、ジウのコメカミが汗ばんでいるようにも見える。
至近距離に居るからこそわかる微細な変化。
「いやいや本気だったんですけれど、俺まだまだ修行不足ですね」
サクもジウにあわせて笑う。
腹の探り合いのような空々しさを感じながら、話題を変えたのはジウだった。
「神獣の力を持つサク殿の様子を見れば、玄武は武神将の代替わりがなされたのか? なんとも羨ましいことだ。ハン殿はどうなされている? まさか口癖の隠居生活を本当にしているわけでもなかろう?」
柔らかな笑みだと思った。
声にも強ばりがない。
――サク。相手の興味を引き出せ。……そして堕とせ。
サクは一瞬躊躇ったように目を伏せたが、やがてきっぱりと言い切った。
「親父は、死にました」
「!?」
ジウとテオンの視線が一斉にサクに向いた。