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吼える月
第25章 出現
「冗談、だろう? なにか…よからぬ感じはしたが、まさか最強の武神将であるハン殿が!!」
「冗談に見えますかね? 玄武の力を俺が持つということは、親父には神獣の加護がなくなったということに等しい。それくらいは親父の次に強い武神将であるあなたは感じ取れていたのでしょう? 親父は最強の武神将ではなくなったんです」
「一体誰が……っ!!」
父を殺したのは息子なのだと、青龍の武神将は考えつかないらしい。
「あああ、ハン殿……、そんなっ!!」
悲憤に呆然としているジウに、サクは皮肉気な笑いを見せた。
「ジウ殿ならおわかりかと思うんですがね。俺が蒼陵に来たのは、黒陵になにかがあったからだと」
ジウの頬肉が強張った。
「俺は、親父の遺言通り…あなたを頼っても良いんですかね?」
「………っ」
――相手が動けなくなったら、サク……。ちょっと攻撃の手を緩めて…、
「ジウ殿は俺の親父の死に心を痛めてくれるんですか?」
「当然だ。ハン殿は私の友だ」
――相手が素直な反応をする部分を貫け。一気に。
「友には痛められる心を、なぜ息子と民に向けねぇんですか? あなた、そんなに器用な方ではないでしょう。親父がよく言ってたじゃねぇですか、誰にでも一点集中型の破壊的な攻撃もいいが、もっと同時に技をこなさないと、見切られたら追い込まれやすいのだって。まあ俺は、1点集中も見極められずに、武闘大会負けましたけど」
「………っ」
「ジウ殿が狂ったと聞きました。どんな理不尽な命令をしたのか、その結果地上の子供達や老人がどうなっているのか、あなたは知らないはずはねぇでしょう」
「………」
「今の今まで俺はあなたと無謀な知恵比べをしようと思っていましたが、あなたが見せた親父への悲悼の表情に心を変え、俺の知るあなたとして質問を変えます。
"作穴須趍吉以避凶"。大きな力が流れる龍穴に建てた石碑に音を反射させて、なにをしているんですか?」
ジウがぴしっと固まった。
それはサクの知る、生真面目なジウがハンに図星を指されたときの反応と酷似していた。