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吼える月
第25章 出現
強度に優れた素材を用いられた、青く輝ける大きな楼門は、見張り台を別途用意して外敵に備えていた黒陵の警備にはないものだ。
楼門は下層に屋根がない二階建てのものであり、上層二階には監視役と思われる警備兵が複数、外を見渡している。
その下層の、輝硬石を大量に投下して作られたと思われる、青い鏡のような大扉の前には、剛健そうな体つきの門番がふたり立っていた。
ジウを見て頭を垂らした後に、大きな…、青く輝く横木の栓をとり解錠すると、それぞれ両手で左右の大きな扉を重い音をたてながら押し開く。
一行は門を潜った。
「ここ……」
その奥に広がる景色を見て、テオンが感嘆のような声を漏らすと、ジウが愉快そうに言った。
「左様。移転前の青龍殿そのままに」
玄武殿によく似た建築様式の、三棟からなる青い屋敷――。
こここそが、蒼陵の要、青龍殿だとサクは直感した。
「無きものはあらず。しかしその逆はあり……」
意味深なジウの言葉。ジウが向いた方向には、高く聳(そび)え立つ…、やはり輝く青き塔が見えた。奇妙な轟音を石碑に反射させていた元凶は、真実の青龍殿の敷地内にあったらしい。
だがあの轟音の元凶が目的地内にあるとサクがすぐ思わなかったのは、ここに近づくに連れて音が小さくなっており、聴力による遠近距離をとれずにいたからだった。
渦が消える時刻に音が鳴るというテオンの話からすれば、自分達がここに来てから何度目になるかはわからないが、渦が消える時刻を過ぎたということだろうか。
色々と疑問を口を出そうとしたサクの気配を感じたか、ジウは先に牽制する。
「サク殿もテオン様も、色々と思うところはおありかと思うが、ここでは口を噤(つぐ)んでいて頂こう。質問はこの先受けるゆえに」
……答える気はあるらしい。サクはテオンと顔を見合わせながら、とりあえず今はジウに従おうと目配せをした。