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吼える月
第25章 出現
そして案内される――、祠官が居る広間。
煌びやかな飾りがなにもない……まるで青い鏡の監獄。
中央に拡げられた青龍織の敷物の上に、肘掛けに肘をつきながら座る、白い着物を着ている、痩せた小さな老人がいた。
屍と見間違うほどにどこまでも真っ白だ。顔色も髭も。
動作一つ一つにしても緩々としていて、どこか気怠げだった。
「父様、ご無事でしたか!?」
テオンが涙声を発した。
それまでの子供じみた言葉をやめて、テオンはきりりとした顔で床に膝をつくと、水平にした両手を重ね合わせ、他人行儀な挨拶をし始めた。
「親不孝のこのテオン、この館から出てもどうしても父様の様子が知りたくて。縁を切られているのに、不躾にもこうして顔を見せますこと、申し訳……」
だが――。
「申し訳ないと思うのなら、ここから早く出よ」
白い姿の祠官は、久しぶりに会う息子を他人を見るような冷ややな顔で一瞥すると、不愉快そうに顔を顰めて、顎で退出を促したのだった。
テオンの手が悲しみに震える。
その震える唇が引き結ばれる。
そして――。
「……申し訳ありません。お元気な姿を見れましたので、これで……」
捨てられた身の上だというのに何処までも従順に、言葉通りに立上がって出て行こうとしたテオンを、ジウの肩にいるサクが懸命に手を伸ばして、テオンの襟首を掴んだ。
「ちょっ、お兄さん……」
「待てテオン。なぜお前が謝る」
「いいんだよ、お兄さん。僕は……」