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吼える月
第25章 出現
「はあああ!? そんな奴なんていないよ、あそこには!!」
「だがジウ殿は"報告"は受けている。本人がそう言ったんだ」
ジウの目は見開いたままだ。
「ありえないよっ、皆小さいんだ。それに皆、兄貴とシバを中心に、ジウを恨んでいる。そんな子供がどうやって、兄貴達の目を盗んで父様やジウに連絡とれるというのさ!! 僕だってここに来るのも、凄く慎重に動かねばならないほどなのに! 大体、渦から船は出ていないんだ!! 渦の中の者とどう連絡が取れるのさ!!」
「たとえば……そう、鳥とか。渦の中に入れるのは空からなら簡単だろ」
「誰が鳥を飼っていると!? いないよ、そんな子供!! 鳥を連絡用に使っているのは……っ」
そしてテオンが顔色を変えて、サクを見た。
「ま、まま、まさかっ!!」
「多分な。鳥を使えぬ子供はいないが、鳥を使える大人はいるだろう。どっちを候補に残す、テオンなら?」
テオンはジウを見た。
「ねぇ、まさか。
ジウ、まさか兄貴……ギルが!?」
サクはその答えに、にやりと笑う。
「恐らく、だからこそ……、ギルが子供達を救っていた理由なんだろうよ」
「え、どういうこと?」
「つまりジウ殿があんな御触書を出したのは狂っているからではなく。狂ったふりを見せつけたかっただけ。ジウ殿は昔と変わらず温厚なまま、きちんと自分がしたことについて出た犠牲を、救おうとしている。
特にさまよえる子供を、ギルに託して」
サクはそして続けた。
「そして子供に、親が居なくとも、海の国…蒼陵で生きるための、海の知識と船の技術を教える。もしかすると、それもギルに託した命令なのかもしれないな。……なあ、ジウ殿?」