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吼える月
第25章 出現
「お前にはわからないかもしれねぇな。武神将と祠官に密接な関わりがあるのと同じように、武神将同士も絆があるんだ。……俺は武神将になりたてだが、俺はジウ殿は狂っていないと信じる。それは俺の意見であり、玄武の武神将の意見であり、そして……親父の意見でもある」
「……っ」
「そしてジウ殿が蒼陵を"守ろう"としている側だと考えれば、俺がそれまで腑に落ちなかった"点"を思い返すと、それを結びつける"線"が見えてきた。偽の青龍殿に生活の気配があったことや、俺にとっては曖昧に思えたギルの立ち位置。ジウ殿とそっくりな顔でなぜシバが信頼しているのか。ギルはジウ殿にとって何者なのか。なんでギルからは神獣の力を感じないのか」
サクはジウに訪ねた。
「実際のところギルは、何者なんです? 瓜二つな顔だけでも、あなたの縁者だということはわかりますが」
ジウは祠官を見た。すると祠官が小さく頷き、重々しく口を開く。
「……私の弟だ。弟は神獣の力を使えず、私が武神将になった時に、影の存在となり蒼陵を支えていた。テオン様も幼き時は、よく間違われていたのですぞ、私とギルの見分けつかずに。ギルは子供好きだから、あなたは私よりギル相手だとよく話された。……今もなんでしょう?」
「え、ええええ!?」
テオンは仰け反りながら、派手に驚いた。
「ギルは、ジウの手先なの!? やっぱりお兄さんの直感は本当の話なの!?」
「失敬な奴だな、お前!! お前は立場的に俺の話を信じろよ。今まで一緒に死線潜り抜けて来た仲じゃないか!!」
「い、や……だけど、僕は全然……。お兄さん蒼陵に来たばかりなのに、なんで……僕の自尊心が……」
「本当に失敬だな!! そこは"お兄さん、さすがは玄武の武神将だね"って褒め称えるところだろ!?」
「……ぶ、ぶははははははっ」
突然、爆ぜたような豪快な笑い声が響き渡った。
サクとテオンは、きょとんとした顔で、腹を抱えて爆笑を始めたジウを見た。ジウは笑い上戸ではないはずなのに、ひぃひぃと笑っている。