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甘く、深く、繋がって
第10章 戻れない日常
ドアスコープで斎藤さんを確認し、意を決してドアを開いた。少し高い位置から私を見下ろすシンメトリー。
「こんばんは」
「こっこんばんは」

……あぁ、ドキドキする。

「入って良い?」
艶やかな笑みで小首を傾げられて
「はっはい」
急いでドアを大きく開いた。
引き取るようにドアに手を掛け、斎藤さんがスッと身体を中に入れてきた。タンと静かな音で外界を遮って、カシャンと後ろ手で鍵を掛ける。荷物を置いて、ごく自然に腰に回された手に抱き寄せられた。
「体調は?」
「だっ大丈夫、です」
玄関のオレンジの灯りに照らされて、薄茶の瞳が優しく私を見つめてる。少し屈んでチュッと額にキスを一つ。
「上がって良い?」
「あ、はい」
応えて先に部屋に上がった。

狭いキッチンの奥、仕切りの引き戸を抜けて居住スペースへ。
私の部屋は至ってシンプル。入って右側、キッチンから見えない位置にスチールのシングルベッド、窓際にパソコン用デスク。厚手のラグの上に楕円形のガラスの天板のローテーブルとクッションが二つ。その正面の低いテレビボードにテレビとDVDプレイヤーがある、だけ。
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