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甘く、深く、繋がって
第10章 戻れない日常
服や小物類、本とかは押し入れサイズのクローゼットの中。
大学生の頃マンションをシェアしていた友達の影響でアースカラーでまとめられた部屋はあまり女の子ぽくはない。女の子らしいのはサーモンピンクのカーテンとベッドの両端のアールヌーヴォー調のデザインぐらい。
「ちょっと意外」
私の後に入って来た斎藤さんがフッと笑う。
「真純の部屋、もう少し色があると思った」
「そう、ですか?」
「うん。良いね。落ち着く」

そう、かな……

「座って下さい。お茶煎れて来ます」
奥に入るよう促すと
「良いよ、俺がやる。真純が座って」
優しい笑顔で逆に座らせられた。
「ご飯食べられそう?」
食欲はあまりないけれど、まだ斎藤さんと向き合う余裕もなくて
「少しなら……」
そう応えていた。
「キッチン借りるね」
斎藤さんが私の頭を撫でてキッチンへ戻って行く。

……

持ってきた荷物の中からラップに包んだお米や野菜を取り出して
「勝手に開けてフライパン出して良い?」
こちらを振り返る。
「あ、はい」
返事をしながら私もキッチンへ。コンロの下からフライパンを渡し、料理に使いそうな菜箸や包丁を取り出した。
「ありがとう」
またポンポンと頭を撫でられて

…………

違う、よね?
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