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甘く、深く、繋がって
第10章 戻れない日常
斎藤さんのさりげない動作に期待する。

「あとは良いよ。休んでて」
優しく諭されて、大人しくローテーブルの前に腰を下ろした。

シンクを流れる水の音。トントンと軽い包丁のリズム。生姜を炒める薫り。

斎藤さんが、うちにいる……いるどころか、料理してる……
あんな噂を聞いてても、その事実が私をときめかせる。シンメトリーの綺麗な顔は横から見てもやっぱり綺麗で、手元を見る睫毛の長い伏し目がちな目がすごく色っぽい。キュッと口角の引き締まった真面目な顔付き。

……かっこいい

その口元がふっと綻んだ。
「そんなに見つめられてると、襲いに行きたくなるんだけど」
言われてハッとなった。

そ、それは……嫌

ふふっと笑いながらこっちを見る流し目に捕われる。加速する心臓。顔が熱い。
「……っ」
「そんなに時間かからないから、待ってて?」
一旦手を止め、身体ごと私の方を向いた斎藤さんが首をかしげてニコリと笑った。

はぁ……だ め

「……はい」
辛うじて頷いて、ローテーブルに視線を落とす。

ドキドキと高鳴る心臓。
顔は熱いのに手は冷たくて、火照る頬をそっと両手で挟んだ。
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