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甘く、深く、繋がって
第13章 苦い惑い
扉の陰から斎藤さんの姿が現れて、微かに甘い香りが漂った。

……この、香り

一瞬にして身体が固まる。
「真純!」
途中から扉に手を掛け、開きながら斎藤さんが滑り込んで来る。抱き寄せられて、ショックで座り込みそうだった身体を支えられる形になった。顔をうずめる斎藤さんからあの香りはしてこない。
少しだけホッとして、でも大きくなっていく不安。
パタンと静かに扉が閉まった。

どうしてあの人の香りがするの?
今までしたことないって思ってたけど、昨日強く意識させられて気付けるようになっただけで、今までもしてたのかな……

「良かった、無事で……」
はぁと大きく息を吐き、密着した身体に直接響いてくる声は優しくて、心から心配してくれているように聞こえた。
「何があったの?」
ふぅっと腕の力が緩み、至近距離から斎藤さんが覗き込んでくる。私を気遣うシンメトリー。少しひそめられた形の良い眉。
「昨日、貧血で倒れてしまって」
「えっごめん、こんな遅くに」
慌てた様子で身体を離された。
「大丈夫?な訳ないよな」
キュッと眉を寄せ
「もしかして、風呂待ってた?ごめん」
気まずそうに続ける。
お風呂は済ませておく予定だったけど……
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