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甘く、深く、繋がって
第20章 そばに、いる
びっくりして嬉しくて、でも桐生さんの目の前で、その上誰が来るとも分からない。会社の人に見られるのは、困る。
「タク、仕事中ですよ」
静かな桐生さんの言葉に斎藤さんの腕がふっと緩む。でも離れない。はぁと吐かれたため息。
「河合さんを出入り禁止にはしたくないんですけどね?」
ピクッと身体が揺れた。

えっ出禁?
そ、それは、イヤ

斎藤さんが腕を解き、一歩後ろに下がってくれた。
「あの中からどうやって抜け出すの?」
離そうとしなかった割りに普通に問い掛けられて、少し戸惑う。
「あ、の……終電の時間も近いので、それを伝えて先に帰らせてもらおうか、と……」
見上げた斎藤さんの瞳の近さにまたドキッとして、慌てて視線を落とした。絶対に顔が赤い。
「……」
「その後の相談をしてたんです」
続けられなくなった私の代わりに桐生さんが言葉を足してくれた。
「ご理解頂けましたら厨房にお戻り願います」
丁寧な、でも有無を言わせない口調に
「分かった」
斎藤さんが私からもう一歩後ろに下がる。
「真純、後で」
「あ、はい」
挨拶をしようと顔を上げ、熱を帯びた瞳にぶつかった。艶を纏ったシンメトリー。
囚われる……
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