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甘く、深く、繋がって
第21章 伝わる心
気になるというか、私には斎藤さんとの出会いを再会と思えるような記憶はなくて。もし人違いだったらと思うと怖くて仕方ない。
「そんなに不安にならないで?」
私の怯えを読み取って、ふうっと柔らかくなった眼差し。
伸ばされた手に引っ張り起こされて、ベッドの上で向かい合わせに座る形になった。
「俺らが会ったの、すっごい昔だから、普通は覚えてないと思う」

……すっごい昔?

「真純、S市に住んだ事ない?」
「S市、ですか?」
「そう」
S市にはお世話になった伯母さんの家がある。でもそこにいたのはほんの僅かで、直ぐに次の親戚の家に引っ越したように覚えている。
「……あります」
「あそこね、俺の地元」
「えっ?」
びっくりして思わず聞き返していた。
「驚いた?」
ニコリと笑って
「真純と会ったのは小二の春休み。家の近くの公園で一緒に遊んだんだ」
続いた言葉。斎藤さんが小二なら、私は幼稚園の年長さんになる。

そんな小さい時に斎藤さんと一緒に遊んだの?

……

思い出そうにも両親が亡くなって数年の記憶は出来事もその時期も、全てが曖昧で、よく分からない。
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