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甘く、深く、繋がって
第21章 伝わる心
黙り込んだままの私に斎藤さんが
「聞いて?真純」
もう一度促してくれた。
その瞳は思いの外真剣で、私の不安を取り除こうと思ってくれているのが伝わってくる。

斎藤さんは、気付いてた……の?
私が、不安に思ってた事に……
だから何度も『真純だけ』って

ジワリと景色が滲んでくる。見られたくなくて視線を落とした。

こんなにも大切にしてもらってるのに、確認する事からも逃げて一人で不安に思ってた、なんて……

「ますみ」
耳に優しいテノールに心を揺さぶられる。堪え切れずに涙が落ちた。
「……真純?」
斎藤さんの右手が頬に触れる。温かくてホッとして、ますます涙が止まらない。
「……ごめん、俺から説明するべきだね」

違う、もっと早くに私が聞いていれば良かった、の……

首を左右に振った私を引き寄せギュッとキツく抱き締めた後、あやす様に背中をトントンと軽く叩く。
「……今、真純が考えてるのはみゆきの事だと思う」
そう言うと身体を離して覗き込んできた。
「……違う?」

分からない。
あの人は名前を名乗らなかったから

「背の高い狐目の女、だろ?」

狐目……
確かに目尻の上がった綺麗な人だった。
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