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甘く、深く、繋がって
第23章 長い一日
『兄貴と話してくれて、ありがとう』
優しい声に自然と顔が綻ぶ。
拓真さんも、克己さんが大切なんだ……
「そんな……話せて良かったです」
『……うん。ありがとう』
お礼を繰り返す拓真さんが、愛しい。温かい気持ちに浸っていたら
『それで、ホテルは良いの?』
静かな声で聞かれてしまった。
良く、はない。
「……はい」
だから、返事が鈍った。
『本当に?』
確認されて諦めると決めた気持ちが揺らぐ。
『良いの?真純』
柔らかな拓真さんの声。私の気持ちを察して、促してくれてるように感じるのは私がそれを望んでるから?
迷って、躊躇して、でも
「い、行きたい、です」
正直に打ち明けると拓真さんがふっと笑った。吐息を近くに感じて、顔が熱い。
『うん、じゃあホテルは予定通りね。でもごめん、二泊しか取れなかった。荷物よろしく』
「はいっ」
一緒に出掛けられる事が、もう手配してくれていた事が嬉しくて声が弾んだ。拓真さんが耳元で笑ってる。
『もう店は閉めたから、いつでもおいで』
「はい」
『スーツケースもあるし、タクシーで来るんだよ?』

心配されてるなぁ……

「はい」
『じゃ、待ってる』
「はい」
嬉しくて、擽ったい。通話の切れた携帯を胸元で包むように握り締めた。

時計を確認すると意外と良い時間。急いでスーツケースに着替えを詰めて、タクシーで『グラン・ブルー』に向かうことにした。
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