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第23章 長い一日

身体を支えようと無意識に拓真さんの背中に腕を回していた。
ふふっと笑う拓真さん。吐息が耳に掛かって擽ったい。逃れたくて温かい胸に深く顔を埋めたら、拓真さんにふわりと包まれた。
「ますみ」
甘い声に柔く呼ばれ、背筋が震える。
「ん……」
やっぱり膝から崩れ落ちそうで。コックコートの肩口をキュッと掴む。今度は頭上で拓真さんが笑ってる。
「今日はゆっくり楽しんでね」
甘い甘い囁きに
「……はい」
小さく頷いて厚い胸に額を擦り付けた。あやすように背中をトン、トンと叩かれて口元が緩んでしまう。仕上げに頭にキスが降ってきた。
「ふーん。本当に気に入ってるのね」
耳に飛び込んで来たシンシアさんの声。それは何処か楽しそうで、拓真さんの腕に力が入った。
「触んなよ、シンシア」
ピリッと張った声で拓真さんもシンシアさんを牽制する。でも
「そんな事言うの？」
クスクス笑うシンシアさんには通じてないみたい。
「何度でも言ってやるよ。真純に近寄んな」
「あ、そっか。自分には勿体ないって分かってるんだ？」

拓真さんに、勿体ない？
逆、でしょう？

拓真さんを見上げようとして、胸に顔を押し付けられた。