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甘く、深く、繋がって
第29章 ・・・のために
みゆきさんと黒田さんが言い争ってる声がする。でも私に届くのは、拓真さんの胸に押し付けられた右の耳を震わす彼の鼓動だけ。左側は拓真さんの手にぴったり覆われて、言葉までは聞き取れない。
「ごめん。ごめん真純」
直接響いた拓真さんの声は苦しそうで。

あぁ、拓真さんも知ってるんだ……

そう思ったら閉ざされてるはずの視界がクラリと揺れた。

衝撃が大きくて考える事が出来なくなる。

頭の中にジーンと響く音。

胸がザワザワして

気持ち、悪い

………

突然ギュッと強く抱き締められて、何処までも落ちて行きそうだった意識が引き戻された。

な、に?

今まで以上に強く耳を覆われて、何も聞こえない。
「いえ、結構です」
密着した頭に響いた拓真さんの硬い声。
「本来彼女は娘さんとは何の関係もありません。彼女は何も言いませんが、私と付き合っているというだけで娘さんに辛い思いをさせられたようです。それでも娘さんと真っ直ぐ向き合おうとした。……対する娘さんの仕打ちは今、ご覧になったかと思います」

娘さんってみゆきさんの事?
じゃあ話してる相手は、ご両親?

確かめようにも私の目も耳も拓真さんに覆われている。
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