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甘く、深く、繋がって
第29章 ・・・のために
「ご心配をおかけしました。ありがとうございます」
その目を見て、口角を上げてお礼を述べる。
緊張しない訳じゃない。でも
私は大丈夫
そう伝えたくて。
「真純……」
柔らかな優しい声。私だけに向けられるその声に安心する。
名前をなぞられただけで温かい気持ちになって、自然と頬が綻んでいた。
うん、大丈夫
拓真さんの手をキュッと握って頭を上げる。
拓真さんの向こうに立つ壮年の男性。クラウチさんと拓真さんは呼んでいた。その背中越し、みゆきさんがこっちを睨んでる。彼女を押さえてるのは黒田さんで。隣に心配そうに立つのはみゆきさんに面立ちの似た男性と同年代の女性。
みゆきさんのご両親、だよね?
二人の眉間に深く刻まれた皺はきっとみゆきさんを思ってのもの。そう思って、一歩前に進み。
「あなたが、娘から恋人を奪ったんですね」
男性から放たれた言葉に一瞬息を飲んだ。
「クラウチさん!」
「違います」
咎めるように名を呼ぶ拓真さんに腕の中へ引き込まれながら、倉内さんを見返す。
「拓真さんはそんな人じゃありません。訂正して下さい」
言い返した私に驚いた様に目を見開いて、じっと見詰めてくる。後ろから私の肩を抱く拓真さんの腕に力が入った。
その目を見て、口角を上げてお礼を述べる。
緊張しない訳じゃない。でも
私は大丈夫
そう伝えたくて。
「真純……」
柔らかな優しい声。私だけに向けられるその声に安心する。
名前をなぞられただけで温かい気持ちになって、自然と頬が綻んでいた。
うん、大丈夫
拓真さんの手をキュッと握って頭を上げる。
拓真さんの向こうに立つ壮年の男性。クラウチさんと拓真さんは呼んでいた。その背中越し、みゆきさんがこっちを睨んでる。彼女を押さえてるのは黒田さんで。隣に心配そうに立つのはみゆきさんに面立ちの似た男性と同年代の女性。
みゆきさんのご両親、だよね?
二人の眉間に深く刻まれた皺はきっとみゆきさんを思ってのもの。そう思って、一歩前に進み。
「あなたが、娘から恋人を奪ったんですね」
男性から放たれた言葉に一瞬息を飲んだ。
「クラウチさん!」
「違います」
咎めるように名を呼ぶ拓真さんに腕の中へ引き込まれながら、倉内さんを見返す。
「拓真さんはそんな人じゃありません。訂正して下さい」
言い返した私に驚いた様に目を見開いて、じっと見詰めてくる。後ろから私の肩を抱く拓真さんの腕に力が入った。